インターンシップ考


ニート―フリーターでもなく失業者でもなく

ニート―フリーターでもなく失業者でもなく

  


 玄田有史、曲沼美恵「ニート −フリーターでもなく失業者でもなく−」幻冬舎を読みました。この本は、わたしが初めてニートという言葉を意識した本です。出版されて2年経っていますが、遅ればせながら読んでみました。章立ては、次の通りです。

  1. ニート」という若者 : データやアンケートを基にしたニートの特徴。
  2. ニートに会う : ヤングジョブスポットで仕事を探す若者へのインタビュー。
  3. 14歳の分岐点 : ニート予防策の職場体験、中学校で5日間実施している兵庫県富山県の例
  4. 14歳と働く意味 : 5日間の職場体験に参加した中学生と卒業した高校生へのインタビュー。
  5. ニートからの卒業 : アルバイトや就職を果たしたニート。 
  6. 誰もがニートになるかもしれない : ニートは「働かない」のではなく、「働けない」。


 ニートが増えた原因をたずねられたら、どう答えたらいいのでしょうか。わたしなら、世の中が豊になったから、とすぐに考えてしまいます。本書ではそうではなく、3つの理由があるとしています。一つには、就職環境が厳しくなったので、努力してもやりたい仕事に就けないから。二つめには、教育によるインセンティブ・ディバイド(意欲格差)*1によって、学校での成功をあきらめ、学習から<降りる>ことによって自己を肯定する者が増えたこと。三つ目には、家庭環境の悪化で、他者との交流が減ったことなどとしています。


 ニートが増加する様々な原因が考えられるわけですが、学校教育が担う責任があることは確かです。若年者の早期離職、フリーター、ニートなどが社会的な問題となっていることから、文部科学省や各自治体ではキャリア教育の推進に力を入れています。


 その一環としてインターンシップがあります。本書でも中学校での5日間のインターンシップを取り上げています。多くの自治体で3日程度で切り上げているインターンシップを5日間行っている兵庫県富山県での取組の紹介です。勤労観というよりも、「自分でもなんとか努力すればなんとかなる」というような自己有用感や自己効力感を生み出すことが大切であるといっています。「勤労観というようも」と言っていますが、自己有用感や自己効力感も十分に勤労観や職業観にかかわってくるでしょう。


 かつて、小渕首相の私的諮問会議として「教育改革国民会議」が開かれ、思いやりの心を育てるために「奉仕活動の義務化」をめぐって議論されたことを思い出しますが、わたしは、勤労観や職業観を育成するために、例えば、中学生を対象に、インターンシップを1年生と2年生で2週間、異業種2回で実施してはと考えます。


 子どもたちは、その発達段階で勤労観や職業観が変化していきます。それを確かなものにするためには、3〜5日間でインターンシップが終わってしまうのでは効果が薄いと思います。将来の職業人を育成するためには、「正統的周辺参加」の理論をもち、子どもたちが学校を卒業したときに、職業人の共同体への十全参加が図れるよう、共同体の周縁部の整備を行う必要があると思います。その一つがインターンシップではないでしょうか。異なった発達段階で比較的長い期間にわたって異なる業種で実施することによって、それが可能であると思います。


 学校、地域、業界、行政の連携が必要なインターンシップです。子どもに勤労観や職業観を確かに育てる取組を行いたいものです (^_^) 。


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