川島隆太さん「読書と脳」

脳の機能


 
 川島隆太さんは、齋藤孝さんがブレイクした直後ぐらいに、「一桁の暗算と1日10分の音読で、脳が驚くほど活性化され、たくましい「脳力」が育つ!」ということで、注目が集まりました。100マス計算の陰山さんとの対談などを見るにつけ、わたしにしてみれば、柳の下の二匹目のドジョウという認識でした。


 さて、脳科学と学習との関連が注目される中、エルネット*1を利用した番組の録画で、川島さんの講演会を見ることができました。平成17年度東日本地区国語問題研究協議会での、「読書と脳」というテーマの講演です。


 川島さんは、機能的MRI*2を使って、音読や計算をしている時の前頭前野の活性化を調べました。前頭前野とは、額の裏側にあり、脳の中の脳といわれ、記憶力やコミュニケーション能力、感情などをコントロールをします。実験の結果、次のことが分かりました。

  1. 簡単な足し算や引き算の計算を行うと、前頭前野が活性化する。
  2. 文章を読んでいる時には、前頭前野が活性化する。
  3. 音読をするとこれらの活性化は、さらに強くなる。
  4. 音読をした後では、単語記憶、符号合わせ、迷路などの学習効果が上がる。
  5. パソコンで文字を打っても前頭前野は活性化しないが、手書きだと前頭前野は活性化する。 


 1〜4から、学習のウォーミングアップには、簡単な音読計算が有効であることが分かります。また、老人の脳の機能低下にもそれらは役立ちます。
 5からは、手で文字を書きながら覚えると記憶が高まること分かります。子どもがコンピュータを使って文字を打つことは、車を使って学校への送り迎えをしていることと同じであり、子どもとITとのつき合い方を考える必要があるといいます。同様に、単にWebページを利用した調べ学習は、有効ではないといいます。


 読書については、「子どもの活字離れは、大人が本を読まないからである」と斬りすてます。親が読書をする習慣をもてば子どもも自ずから本を読むようになるといいます(うちに限っては、はずれているかな)。


 さらに川島さんの話は、認知症の老人に対する学習療法、子どもと老人が関わり合う地域教育力の向上へ話が及びました。


 おもしろかったのは、複雑な計算をするよりも単純な計算の方がより前頭前野が活性化したり、内容は分からなくても、音読すると前頭前野が活性化するということでした。その仕組みについては、何もコメントはありませんでしたが、その方が、人間としては何らかのメリットがあるのでしょうね。


 科学的な実験を基に、学習の在り方を提案したり、市民のボランティア活動による脳ウェルネス活動を推進したりする川島隆太さんに好感がもてました。でも、あの商業ベースは、いただけない感じがします。川島さんの著作や監修は、この4年間で約80冊に及びます。おそらく、脳科学の実験には莫大なお金が必要なのでしょうね。


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*1:衛星通信を活用して,教育・文化・スポーツ・科学技術に関する情報を直接全国に発信する文部科学省の教育情報衛星通信ネットワーク

*2:血液中の酸素の量を指標として脳血流の変化を間接的に測定する方法