「校長先生という仕事」を読む


校長先生という仕事 (平凡社新書)

校長先生という仕事 (平凡社新書)

 
 この本は、長崎大学の先生のブログ「寺嶋の連絡帳」で知りました。著者は、吉田新一郎さん。1979年マサチューセッツ大学工科大学(都市・地域計画専攻)を卒業。コンサルティングや海外協力NGOの普及のお仕事をしていた、教育のことを語るには、少し変わった経歴の持ち主です。中公新書として、「会議の技法」「いい学校の選び方」の2冊の本を出しています。


本の構成は、次の通りです。

パート1 校長先生の一日
パート2 校長先生の立場
パート3 学校改革の担い手としての校長の仕事


 校長先生というと、校長室にでんと構えているというイメージなのですが、ここに登場する校長先生は皆さん、よく動き回っています。また、日本人校長と違って、外国人校長は、教員に対してフレンドリーです。授業のアドバイスも今はやりの「コーチング」を生かしたものです。

 
 登場する外国人校長は、校長歴20年、同一校で14年校長をしています。この地域では、早くから管理職になるコースと教員のままでいるコースに分かれて、それぞれの道の研鑽を積むそうです。


 著者は、日本の教育行政や学校レベルの努力の対象が、「生徒の学び」以外にあり、また、質の高い授業の提供を目的とした「授業観察」が校長の仕事の優先順位の高い項目ではないといいます。


 外国では、生徒たちがよりよく学べるための「教師たちの教え方」、つまり「教員の資質向上」に力を入れているそうなのです。外国では、地域によっては校長が、そのような視点をもって、自分の学校の教員を雇います。


 確かに、特に高等学校の場合、生徒の進路保障のために、基準を達成できていない生徒に対して補充講座を開いたり、進学対策のための講座を開いたりと、学習のシステムをつくることには努力をしますが、システムができれば、「教師の教え方」については各教員任せです。また、「よりよい教え方」というような校内研修はありません。


 個人的には、茅ヶ崎市立浜之郷小学校や富士市立岳陽中学校ように、学校経営の中心が「児童生徒の学び」であるような取組が広がればよいと思います。


 著者はコンサルティングの専門家。パート3では、これでもかこれでもかと校長が行うマネジメントの方法を取り上げます。その数の半端ではないこと。少々食傷ぎみです。また、それと関連した図表が同じページに無く、ページを前後にめくりながら読まなければなりません。もう少し、吟味・精選して論考すれば、より深みのある本になったであろうと思いました