ヤマアラシのジレンマ
「ヤマアラシのジレンマ」という寓話があります。
ある寒い冬、2匹のヤマアラシが暖をとろうとして身を寄せ合います。しかし、ヤマアラシの体をおおう鋭い針のために、近づきすぎると、お互いを傷つけ合ってしまいます。かといって、離れすぎると、お互いぬくもりは得られません。2匹は、何度も近づいたり、離れたりを繰り返しながら、ようやく互いに傷つかずぬくもりを感じられる距離を見つけます。
この「ヤマアラシのジレンマ」は、ショーペンハウアーの作で、人間関係における「心の適当な距離」についての話です。
フロイトは、この寓話を、著書「集団心理学と自我の分析」の中で、寄り添えば寄り添うほどお互いに傷つけ合ってしまう、人間関係の苦悩を表す心理用語として紹介をしています。
明日で、長崎県佐世保市の小6女児事件から1年となります。被害者の女の子も加害者の女の子も、この2匹のヤマアラシだったのではないでしょうか。
加害者の女の子は、太宰治の小説「走れメロス」を読んで「友情の大切さを感じた」と話すなど他人を思いやる心理ものぞかせているといいます。亡くなられた女の子の冥福を祈ると共に、加害者の女の子に、事件と向かい合う姿勢が強く育つことを期待したいと思います。