学習指導要領改訂「生物基礎」

ote2009-08-20



 この度の改訂で,生物領域は基本的な概念を学ぶ「生物基礎」とより発展的な概念を学ぶ「生物」の2科目です。従来よりも大きな改訂になったようです。「生物基礎」の特徴は次のとおり。

 中学校との接続に配慮し,「生命」と関連付けて「生物の共通性と多様性」の視点を重視した項目を科目の導入として新設している。日常生活や社会との関連を重視し,免疫や生態系などの健康や環境に関する内容を充実している。また,新しい生物学の内容として「遺伝情報とタンパク質の合成」を現行の選択科目「生物II」から「基礎生物」に導入している。
    「中等教育資料」平成21年5月号


 上の囲みにもあるように,「遺伝情報とタンパク質の合成」が「生物基礎」に導入されました。高等学校の遺伝教育は,メンデル遺伝からスタートするのが当たり前でした。4年ほど前に日本遺伝学会の遺伝教育の懇談会に出席したときに次のような話がありました。「生物Iは、DNA、バイオテクノロジーなどが排除され、学ぶ意義が分からない。生徒はDANを学びたがっている。」「日本の生物教育は遅れている。メンデル遺伝を過大評価している。DNAや遺伝子、セントラルドグマを教えることなくメンデル遺伝を教えることは、生徒にとって分かりにくい。メンデル遺伝はコラム程度で構わない。」このときにはメンデルありきが根付いている現状では,DNAから教えるのは無理だと思っていました。しかし,今回の改訂では中学校でメンデル遺伝の優性の法則と分離の法則を学習することもあり,高等学校ではDNAの複製や分配,セントラルドグマからのスタートが可能となったようです。ということは,メンデルありきはまだ健在ということですね (^0^) 。


 ヘプター『ゆかいな生物学』では,「メンデル遺伝学の基礎」の項目の前に,「DNAとRNA」「DNAの複製」「転写と翻訳」の項目があります。ここでは,細胞が生きている間にしなくてはならない2つの重要なことという話から始まっています。細胞分裂をしたときにいかに親から受け継いだ情報を受け渡すか。情報を受け継いでタンパク質(酵素)を製造しなければならない。この2つです。この本を見ていると,メンデル遺伝からという発想は出てきません。


 メンデル遺伝の独立の法則,連鎖・組換え,伴性遺伝はより発展的な科目「生物」で学習することになります。大学入試センター試験がどうなるかですが,「生物基礎」が対象科目となると生徒は苦しめられている遺伝の問題から解放されるのでしょうか。でも大学側の指定は「生物」でしょうね (^0^) 。平成24年の先行実施をひかえた平成23年度中に方針が発表されるそうです。



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