伊藤和也さん「現地に行かなければ何も始まらない」

ote2008-08-28



 朝、学校でインターネットのニュースを見ていると、アフガニスタン東部のジャララバード近郊でが拉致され遺体で発見された「ペシャワール会」ボランティアの伊藤和也さん(31)の「ペシャワール会への志望動機」が掲載されていました。今日はこの志望動機を生徒に紹介しようと思いました。


 今年は2学年の担任です。進路選択といういう意味では大切な年だと思います。それで、今年はキャリア教育の一つとして「ひと」に焦点を当て、様々な人の生き様を朝のSHRを利用して紹介しています。常日ごろ生徒には、「将来どのような人の役に立ちたいと考えているのか」「人の役に立たない仕事はない」と言っています。


 伊藤さんの志望動機には、ストレートにそれが書かれていました。生徒諸君には、この伊藤さんの思いを大切にしてもらうとともに、自分に照らして自分の「今」、自分の「将来」について考えて欲しいと思いました。


 インターネットから伊藤さんの志望動機のテキストを一太郎にはり付け、さらにイメージできるように伊藤さんの画像もはり付けてプリントを作りました。朝のSHRに配り、本文を読み上げました。読むうちに伊藤さんの無念さ思うと胸にこみ上げるものがありました。生徒にはいろいろと話をしたかったのですが、言うことが飛んでしまいました。また、機会をとらえてしっかり話をしようと思います。志望動機の全文は次のとおりです。

 私がワーカーを志望した動機は、アフガニスタンに行き、私ができることをやりたい、そう思ったからです。私が、アフガニスタンという国を知ったのは、2001年の9・11同時多発テロに対するアメリカの報復爆撃によってです。その時まで、周辺国であるパキスタンやイランといった国は知っているのに、アフガニスタンという国を全く知りませんでした。
 「アフガニスタンは、忘れさられた国である」
この言葉は、私がペシャワール会を知る前から入会している「カレーズの会」の理事長であり、アフガニスタン人でもある医師のレシャード・カレッド先生が言われたことです。今ならうなずけます。

 私がなぜアフガニスタンに関心を持つようになったのか。それは、アフガニスタンの復興に関係するニュースが流れている時に見た農業支援という言葉からです。このこと以降、アフガニスタンに対しての興味を持ち、「風の学校」の設立者である中田正一先生の番組、偶然新聞で見つけたカレーズの会の活動、そして、カレーズの会の活動に参加している時に見せてもらったペシャワール会の会報とその活動をテーマにしたマンガ、それらを通して現地にいきたい気持ちが、強くなりました。

 私は、関心がないことには、まったくと言っていいほど反応しない性格です。反応したとしても、すぐに、忘れてしまうか、流してしまいます。その反面、関心を持ったことはとことんやってみたい、やらなければ気がすまないといった面があり、今回は、後者です。私の現在の力量を判断すると、語学は、はっきりいってダメです。農業の分野に関しても、経験・知識ともに不足していることは否定できません。ただ私は、現地の人たちと一緒に成長していきたいと考えています。

 私が目指していること、アフガニスタンを本来あるべき緑豊かな国に、戻すことをお手伝いしたいということです。これは2年や3年で出来ることではありません。子どもたちが将来、食料のことで困ることのない環境に少しでも近づけることができるよう、力になれればと考えています。甘い考えかもしれないし、行ったとしても現地の厳しい環境に耐えられるのかどうかもわかりません。しかし、現地に行かなければ、何も始まらない。そう考えて、今回、日本人ワーカーを希望しました。
 2003年6月15日


生徒とともに、伊藤和也さんのご冥福を祈念いたします。合掌。


 なるほど! と思ったら、ワンクリックを → 教育ブログRanking