川本和久「2時間で足が速くなる!」をやってみました。



 日本陸上競技界で、今一番注目されているのが福島大学です。走り幅跳び池田久美子(スズキ)、400mの丹野麻美をはじめとする学生3名とOG4名の計7名が昨年の世界陸上に出場しました。東北の一地方大学でこれだけの人数が出場することは奇跡に近いものがあります。といっても川本監督のこれまでの努力からいえば、自明なことかも知れません。「2時間で足が速くなる!」はこの川本監督が書かれた本です。


 この本では、川本監督が考案の速く走るための「ポン・ピュン・ラン」のテクニックを簡潔に紹介しています。「ポン・ピュン・ラン」とは、上から下に脚をおろして地面にエネルギーを加え(ポン)、地面から跳ね返りエネルギーをもらって弾みながら遠くに進み(ピュン)、ゴールに向かって体をまっすぐにして移動させる走りのことです。


 これを体得するために、次のようなドリルを紹介しています。

「ポン」のマスター

  1. 体の軸をつくり、片脚を引き上げ、地面の空き缶をつぶすイメージで振り下ろす。(引き上げるときには大腿四頭筋で、振り下ろすときはハムストリングスを使う。)
  2. 1のドリルで、振り下ろしたときに、地面を押し、腰の位置を前へ移動させる。
  3. 2のドリルを両足連続で行う。
  4. ヒザを伸ばし、足首を固定して両足ジャンプして体をバウンドさせる。(地面からの跳ね返りエネルギーを感じとる。)
  5. 4のドリルで、もう一人がバウンド合わせて肩を下へ押す。(さらにエネルギーを感じる。)
  6. 5のドリルを、左右交互に片脚でジャンプする。
  7. 10個のマークを60〜160cm刻みに置き、6のドリルを行う。(跳ね返りエネルギーを推進力にする。)


「ピュン」のマスター

  1. 助走をつけ、「1、2」のリズムで後ろ脚を前へスイングし連続ジャンプ
  2. 1のドリルを「1、2、3」のリズムで左右交互にジャンプ

 いつもこの手の本で思うのですが、だれが指導しても本で書かれた動作を正確に子どもにやらすことができるかと言えば、それは難しいと思います。やはり、ある程度の走りの経験や走りについて考えたことがなければ、本に書かれたポイントである動きや意識の理解が難しいですし、実際に動いて見本を見せることができません。


 生徒にやらせる前に、自分でやってみました。普段やっているドリルでも、何のために行っているのかがはっきりすると、動きがシャープになります。また、新しいドリルと出会うたびに、これまでやってきたドリルにも新しい発見があります。例えば「ポン」の1のドリルの動作でも、為末選手の「走りの極意」ではへそ下周辺を固めることの効果を知るためのドリルとなっています。わたしはこの動作で、大腿四頭筋ではなく腸腰筋を意識して脚を引き上げることを意識しました。そうすると、へそ下周辺を固めることができました。


 この「ポン・ピュン・ラン」は、川本監督の走りに対する考えがシンプルにまとめられた興味深い本でした。丹野麻美がモデルとなっているところも楽しめます。(^_^)。


為末大 走りの極意

為末大 走りの極意


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