授業改革の原点−「わかる」ということ−

ote2006-02-11



 佐伯胖先生*1の講演を聴きました。テーマは「『わかる』ということ」です。佐伯先生の講演を聴くのは,2回目です。先生の講演は,エピソードをなどを織りまぜて話すのですが,淡々とした語り口調で,まとまりがよく,今日のテーマのごとくよくわかります。


 今日の話は,学習論の変遷から始まりました。行動主義心理学の「できる」から,認知心理学の「わかる」,さらに状況的学習論の「ともにわかる」という流れです。

 今回の講演で,いままでの疑問が1つ解けました。それは,正統的周辺参加*2において,共同体に新参者が参加して過程と学校で学習者(新参者)が学ぶという過程がどう関係しているかです。


          


 それは,次の3点に要約できます。

  1. 学校そのものには,子どもが参加する文化的実践はない。
  2. 子どもは,共同体のまわりにいて,文化的実践に周辺参加ではなく,周縁的参加をしている。したがって,子どもは学校を卒業後,正統的周辺参加をするかもしれないし,しないかもしれない。
  3. 学校では,共同体の文化実践に「関心」や建設的な批判を含めた「理解」をしていく場である。


 ですから,学校では,次の3点を考える必要があると示唆されました。

  1. 教材と文化的実践とのかかわりを考えること。教科の枠組みやその手法に慣れることが大切である。
  2. 教科の背後にある文化的実践に,意義,価値,自分自身との関連性をもつこと。
  3. 文化的実践へ部分的参加をすること。


 職場体験学習を通して,働くという意味を考えたり,スーパー・サイエンス・ハイスクールやサイエンス・パートナーシップ・プログラムで実際の科学の現場とつながることが,まさに,この周縁参加であると思います。


 教育現場では,臨床的に子どもにかかわっていきます。わたしたち教員は,臨床の背後にある理論を理解することにより,よりよく子どもとかかわることができるのではないでしょうか。また,機会があれば,佐伯先生のお話を聞きたいと思います (^_^) 。


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*1:青山学院大学文学部教授,青山学院大学総合研究所eラーニング人材育成研究センター長。慶応義塾大学工学部管理工学科卒業。ワシントン大学大学院心理学専攻博士課程修了。東京理科大学工学部助教授、東京大学教育学部教授を経て、現職。状況的学習論の立場から、幼児教育、学校教育、並びにコンピュータ教育などの研究をしている。特に幼児教育の分野で、子どものおかれている状況を関係論的に分析し、保育実践を道具、モノ、人の総合的環境構成として考える立場で追究している。☆ 主な著書「『学び』の構造」(東洋館出版)、「『学ぶ』ということの意味」(岩波書店)、「『学び』を問いつづけて」(小学館)、「幼児教育への誘い」(東京大学出版会)、「『わかる』ということの意味」(岩波書店)、他

*2:新参者は,共同体の文化的実践に周辺から参加していくことによって,その共同体のアイデンティティを獲得する過程。言いかえると,新参社が共同体に散在する学習資源にアクセスし、熟練者となっていく学習過程