全国学力テストの実施は慎重に

 義務教育改革の一環として検討されている全国学力テストについて、文部科学省は9日、平成18年度から実施するための関連経費を来年度の概算要求に盛り込む方針を固めた。対象となる学年のすべての児童生徒にテストを実施する全数調査を目指す。(略)文部科学省は実施方法を中教審に諮った上で、8月までに骨格を固める。
 全国学力テストは昨年11月、中山成彬文科相が「子どもたちに競争意識をもたせることが必要」として実施の意向を表明。経済財政諮問会議も「学校評価のために全国学力調査を実施し、学校間の競争を促進する」と市場原理を導入する立場から実施を求めている。  7月10日 産経新聞


 国は、学習指導要領の目標・内容に照らした児童生徒の学習状況を把握するために、小学校5年生から中学校3年を対象に、抽出(約45万人)で、国語、社会、算数・数学、理科、英語(中学生のみ)で学力調査を行っています。また、39都道府県・11指定都市においても、独自に学力調査を行っています。



 学力調査の目的は、学習指導の工夫改善にもあります。子どもたちが学習上のどこでつまずいているかを明らかにし、それを改善するには、どのような指導を行えばよいかを検討するのが学力調査の目的です。上画像の本が、その報告書です。


 国でそうした学力調査が行われているのに、なぜ、各自治体は独自に、学力調査を行っているのしょうか。それは、国の調査では、各自治体ごとの調査結果を公表していないからなのです。自治体は独自で学力調査を行い、学力分析を行い、学習指導の工夫改善について各学校へ報告しています。
 

 さて、新聞報道にあるように、国が対象となる全児童生徒に学力調査を行い、各自治体や学校ごとの調査結果の公表を、子どもたちの競争意識をもたせるため、また、学校間の競争を促進させるために行うというのはどうでしょうか。


 学校間の競争を促進させることは、結果的に子どもたちの学力向上につながるでしょうが、学力調査のための学力向上になりはしないか心配です。子どもたちには、「見せかけの学力」ではなく、「確かな学力」を身に付けさせたいと思います。


また、もう一つ気になるのは、次の報道です。 

 昨年12月に公表された経済協力開発機構OECD)の学習到達度調査(PISA)の結果、読解力の低下が指摘されておりPISA型の問題も含めたい意向だが、問題作成に時間がかかり、導入できるかどうかは未定だ。


 学力調査が何を目的とするのかを明らかにすべきだと考えます。特に、国際調査における「読解力」は、これまで日本で考えられていた「読解力」とは、少し違う概念であるようですし、国がそれをしっかりと学習指導上に位置付けるのが先決だと考えます。単に、国際調査で「読解力」に問題があったいうことだけで、PISA型の問題を出題するというのは、短絡的で国としての説明責任を果たしていないと思います。


 文部科学省も、以上のことについては、真剣に議論を行っているものと思います。子どもそのものを見据え、あまり短期的な視点に偏らずに、長期的なビジョンをもって検討をお願いしたいと思います。


なるほど! と思ったら、ワンクリックを → 教育ブログRanking