伝えたいことを、本当に伝えるためには

池上彰さん



 池上彰さんの講演会へ行ってきました。意気込んで45分前に会場に着き、前から7列目の真ん中の席をキープしました(^_^)。


 演題は「子どもと真正面から向かい合うために」です。前回紹介した「こどもにも分かるニュースを伝いたい」新潮社の「週刊こどもニュース」にかかわる内容に、その裏話を付け加えたお話でした。


 「週刊こどもニュース」では、当たり前ですが、いかに子どもに分かりやすくニュースを説明するかに腐心されています。小学5年生が分かるニュースを目指しています。一週間のニュースを振り返るコーナーでは、前日に子どもを含めたスタッフが集合し、池上さん自身が書いた原稿を読むそうです。そこで、子どもやスタッフが分からない部分を何度も何度も全員が分かるまで修正するそうです。


 「週刊こどもニュース」は、スタッフに恵まれていたそうです。この番組は、報道局社会部と子ども番組制作の2部門が協力してつくっています。子ども番組のスタッフは、ニュースへの堪能さについてのプライドは全くもっていないので、分からないことは分からないと素直に発言してくれたそうです。社会部のスタッフは、一般人や子どもが何が分からないかということが、分からなくなっているそうです。池上さんは言います。「分からないといえる雰囲気が大切です」


 三菱車のリコールのニュースの場合、子どもは、市長などのリコールは学校で習って知っていますが、商品のリコールは知りません。そこで、「安全性に問題がある場合、その商品を無料で修理する」と説明したところ、「安全性に問題があるってどういうこと」と質問されたそうです。


 「差別はいけないよ」と話したところ、「差別って何」と子どもに質問されたそうです。「え、学校で差別はしてはいけませんって言われるんじゃないの」と池上さんがたずねたところ、「言われるけど、差別、差別って、当たり前みたいに先生が言うから聞けなくって」と子どもが言ったそうです。


        


 「上越新幹線が東京と長野を結んでいる」では、子どもは「結ぶ」という意味が取りにくいそうです。そこで、スタッフで考え、「上越新幹線は、東京と長野の間を走っている」としたところ、子どもが言ったそうです。「で、上越新幹線って、どこまで行くの」。つまり、子どもは、「間」と聞いて、東京と長野のまさに中間あたりをずっと走ると考えたそうです(上写真の白板)。


 「週刊こどもニュース」のスタッフルームには、小中学校のすべての教科書が置いてあります。小学5年生が学校で習っていない言葉は、原則として使えません。以前、関税の話をするときに、「関所」という言葉を使って説明しようとしたところ、小学校でも中学校でも「関所」という言葉は教科書にありませんでした。スタッフが「時代劇ぐらい見ているでしょう」といったそうですが、結局「関門」という言葉に置き換えたそうです。


 池上さんは言います。「伝えようとしていることを、果たして本当に伝えているのでしょか。本当に伝えるためには必要なものがあります。それは”想像力”です。伝える相手について”想像力”を働かせることによって本当に伝わるのです。また、それは相手に対する思いやりなのです」


 機会があれば、また聞いてみたいと思う講演でした (^_^) 。


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