アマゾンで本を買っていませんか。

アマゾン・ドット・コムの光と影

アマゾン・ドット・コムの光と影


 本書は、元物流業界紙の編集長が、千葉県市川市のアマゾンジャパンの物流センターに潜入したルポルタージュです。アマゾンは、いつも利用しているので気になって買ってみました。


 わたしが買う本の大半は、アマゾンで買っています。その理由は以下の通り。すっかりアマゾンの戦略にはまっていますよね。

  1. 街の書店では並んでいない本があります。
  2. 特別な本でなければ、3、4日で手に入ります。
  3. 1500円以上は送料がかからないので、電車に乗って買いに行くよりもお得です。
  4. 各本に対するレビューなどの情報が、購入の際に参考になります。
  5. キーワードで検索して、未知の本を探し出すことが出来ます。
  6. クレジットカードで購入でき、家族でも簡単に受け取れ、お金が無いときでも購入できます。

 
 日本通運(日通)の子会社が、アマゾンジャパンに発注された書籍を集約し、アルバイトを使い、物流センターでピッキング「1分で3冊」、検品「1分で4冊」、棚入れ「1分で5冊」、手梱包「1分で1個」での作業を要求されます。時給は900円成り。


 アマゾンも考えて商売しています。最近ユーズド商品をいくつか買いました。なんで、古本を扱うかですが、ユーズド商品だと、アマゾン側の送料が不要で(購入者負担)、さらに商品を出した人から手数料が取れるのです。道理で「○○さん、¥38,446で商品が売れます! Amazon.co.jpで購入した商品を出品しませんか?」って、Webページ上に表示されるわけです。


 また、取次店を通さない本*1やソフト*2の販売をしています。本の場合、取り分は、出版社70%、取次点8%、書店が22%です。書店の取り分の数%が、売り上げの大きな違いとなります。


 アマゾンの一番の成功は、個人別につくられたWebページだそうです。個人の購入やWebページの閲覧履歴から、一人ひとりのニーズをコンピュータで見つけ出し、おすすめを表示します。一般の書店が一人ひとりのニーズを顧みない中、アマゾンは顧客第一主義で成功をしています。わたしも、おすすめを何点か買ったことがあります。


 アマゾンは、2004年決算で、500億円あまりの売り上げだそうです。「だそうです」というのは、アマゾンは秘密主義で、売り上げに関する情報を一切外部に出しません*3。現在、紀伊國屋書店丸善が、年間1000億円の売り上げで、第一グループの書店です。今年中には、アマゾンジャパンがこの二つの書店に並ぶと予想されています。いいんだか、悪いんだか分かりませんが。


 さて感想ですが、この本は、なにも物流センターに潜入しなくても書けたんではないでしょうか。筆者は鎌田慧自動車絶望工場」について本書で触れており、意識はしているものの、アルバイトをしている人たちに社会的なリアリティが感じられません。わたしは、潜入ルポルタージュと聞くと、「自動車絶望工場」と共に堀江邦夫「原発ジプシー」を思い出します。この2冊は、筆者が作業員と寝食を共にしながら、そこで働いている者の生き方と社会背景を描きだし、本書とは比較にはならないほど深みや厚みがあります。でも、これは結果論かもしれません。


 しかし、まったくアマゾンという企業を知らなかったわたしには、興味深いものでした。この本を読んで、アマゾンのブラックリストに載らないでしょうね (^_^) 。


自動車絶望工場 (講談社文庫)

自動車絶望工場 (講談社文庫)

原発ジプシー (講談社文庫)

原発ジプシー (講談社文庫)

*1:例えば、刊イトイ新聞「言いまつがい」

*2:例えば、「えいご漬け

*3:世界での売り上げ総額は発表するそうです。