大人の科学的素養のねらいは


 4月30日付読売新聞に、「科学常識このぐらいは――目安作り、文科省乗り出す」という記事が掲載されたらしいのです。らしいというのは、現物を見ていないからなのですが.......(Yahoo!ニューズの記事を参考にしています)。


 この記事の中で、「大人が科学の勉強をしていない」「必要な科学常識について一定の合意があれば、学校教育や生涯教育の指針になる」とありましたが、文部科学省には、さらに切実な問題があるのです。


 日本の科学技術のキーワードは、「科学技術創造立国」です。しかし、その実現に、今赤信号が点っています。その要因の一つは、長期経済不況下における科学技術への投資が危ぶまれていること、二つには、2007年より始まる人口減少や高齢化社会によって、人材の確保が質・量ともに難しくなることにあります。


 文部科学省や産業界には、大人の科学的素養の向上を図ることで、科学技術への理解や共感を高め、投資を増やす環境づくりをするとともに、人材を養成するために、学校教育から生涯教育までの教育環境を整えていこうとする目論見があります。


 そのための大人の科学的素養の指標づくりとして、「日本の成人が身につけるべき科学技術リテラシー像の策定」、記事でいう「科学常識の目安の策定」となったのでしょう。そのサンプルが、2001年に国際調査に使われた、18歳以上を対象とした「科学技術の基本的な知識に関する理解度」調査問題なのです。この調査で、他の国とは調査年度が違うものの、正答率の低さが浮き彫りになりました。


 世の中の大多数は、文系人間です。文系人間の科学技術への理解と共感なしでは、社会的コンセンサスができません。また、官僚のトップも、文系です。この人たちが科学技術に理解と共感をもってくれなければ、科学技術振興政策が行えません。大人の科学的素養づくりとは、実は「文系人間」をターゲットにしたものなのです。


調査問題は以下の通りです。 

【科学常識チェック、〇か×か】(国際比較の共通質問から)

  1. 地球の中心部は非常に高温
  2. すべての放射能は人工的に作られた
  3. 我々が呼吸に使う酸素は植物から作られた
  4. 赤ちゃんが男の子になるか女の子になるかを決めるのは父親の遺伝子
  5. レーザーは音波を集中することで得られる
  6. 電子の大きさは原子よりも小さい
  7. 抗生物質バクテリア同様ウイルスも殺す
  8. 大陸は何万年もかけて移動しており、これからも移動するだろう
  9. 現在の人類は、原始的な動物種から進化した
  10. ごく初期の人類は、恐竜と同時代に生きていた
  11. 放射能に汚染された牛乳は沸騰させれば安全

常識チェックの答え
 1. ○ 2. × 3. ○ 4. ○ 5. ×
 6. ○ 7. × 8. ○ 9. ○ 10. × 11. ×