百「教」繚乱 (ひゃく「きょう」りょうらん)

ote2005-05-01



昨年12月の二つの国際学力調査、PISAとTIMSSの結果により、大臣自らが学力低下を認め、総合的な学習の時間の見直しに言及し、学力低下の火の手もいよいよ本丸に近づいてきた。と思いきや、ここにきて、様々な観点からこれまでの学力問題について意見が出されています。オピニオン雑誌である、「中央公論」「論座」「世界」では、時同じくして特集が組まれました。特に、面白かった論文は、次の3つです。

希望格差社会とやる気の喪失」 山田昌弘東京学芸大) 
 学力低下は、学習内容の改善や教える工夫だけでは解決できない。勉強した努力が報われない学校教育システムの改善が必要である。 →しかし、中学生以上ならともかく、小学生にまでこの話は拡大できるのでしょうか。親に勉強しても報われないのではないかという養育態度があり、それが影響を及ぼすのでしょうか。

「見直すべきは人と金と時間の配分だ」 苅谷剛彦(東京大) 
 義務教育費国庫負担金の廃止される可能性の中で、人件費の増加が見込まれる。また、今後15年間で、小中教員の半数が退職し、平成20年より毎年2万人の採用が生じる。人材不足と教員の質が問題となる。将来、教職員の処遇の悪化が予想される。・・・・・・・・累進課税とか、年金、雇用保険といった社会保障制度と同じように、資源再分配を担う社会政策の一つとして、義務教育を位置づけ直す必要がある。 

「劣化する学校教育をどう改革するか」 佐藤 学(東京大) 
 「勝った、負けた」の判定のために国際学力調査が行われているわけではない。実際、PISAでは476ページ、TIMSSでは455ページの英文での報告書があるが、ランキングについての記述は10ページに過ぎない。文科大臣、記者、教育評論家たちは、これらの報告書を読んだのだろうか。・・・・・・二つの報告は、わたしが繰り返し指摘してきた「学びからの逃走」が子どもたちの中にいっそう深く浸透している事態を示している。


 文科省4月発表の新しい教育課程下での学力一斉調査の結果を受け、これまでの学力低下論と相まって、今後の教育改革はどう進んでいくのでしょうか。


中央公論」4月号 中央公論社 
特集 学力崩壊−若者はなぜ勉強を捨てたのか 
・「ゆとり」と「詰め込み」の間で揺れた五年間 中井浩一(評論家)
希望格差社会とやる気の喪失 山田昌弘東京学芸大)
・「バブル学力」崩壊後の大衆〝勉弱〟社会を歓迎する 竹内 洋(京都大)
・学力を捨て、「ケータイ」へ向かった十代  原田曜平(博報堂
・若手官僚座談会それでも文部科学省を信じてほしい座談会 文科省若手官僚
・「対人能力格差」がニートを生む 本田由紀(東京大)
・国の責任で世界トップの学力復活を目指す 文部科学大臣 中山成彬


論座」5月号 朝日新聞 
特集 ゆとり教育の失敗
・見直すべきは人と金と時間の配分だ 苅谷剛彦(東京大)
・「和魂洋才」路線は第2の挫折を招く 岩木秀夫(日本女子大
・学校・家庭・地域の連携が教育の劣化を防ぐ 河村建夫(前文科大臣)
・学力の階層間格差が広がっている 志水宏吉(大阪大)


「世界」5月号 岩波書店 
特集 競争させれば学力は上がるのか?
・劣化する学校教育をどう改革するか 佐藤 学(東京大学
・誤読/誤用されるPISA報告 岩川直樹
・教師にゆとりを 長谷川道雄(三春町立三春中学校教諭)
・「総合的な学習」のこれまでとこれからを考える 牛山栄世(信濃教育会)
・国語教育の現場で「学力」を考える 現場教師
・【スウェーデンからの報告】考えながら、参加しながら学ぶ教育 広瀬智子
・学力つけても職はなし 伍賀一道(金沢大学)