小川勝『10秒の壁−「人類最速」をめぐる百年の物語』を読みました。



 本書は、1912年から今にいたる100m競技の歴史について、10秒の壁をテーマに書かれたものです。1912年には、5分の1秒単位のストップウオッチが使われていたそうな。当時の世界記録は10秒3/5であったそうです。


 五輪史上初めて、電気計時が公式記録に採用されたのは東京五輪。これも知りませんでした。手動計時(ストップウオッチ)だとピストルが光ってから押すので、若干タイムが早くなります。そこで手動計時に合わせるため、東京五輪の電気計時では、スタート号砲から0.05秒遅れて時計が動き始めるようにしました。これまたびっくり。そして、100分の1の位は四捨五入。東京五輪100mの覇者ヘイズの電気計時での公式記録は10秒01。これは0.05補正した値なので、実質的にヘイズが10秒の壁を初めて破ったと考えられます。公式的にはメキシコ五輪のハインズの9秒9が、世界初の9秒台となっています。


 現在は電気計時だけが公認記録となっています。わたしが最初に審判をしたとき(1983年)には、10分の1秒単位のストップウオッチでの計時が主流でした。ゴールの審判台には十数人の審判が座っていました。今はどんなに小さな大会でも電気計時を行います。ゴール付近には計時・決勝にかかわる審判員はいません。隔世の感がありますね。


 これまでオリンピックイヤーには、100mの世界記録がでています。北京五輪の今年も、ウサイン・ボルト(ジャマイカ)が9秒72の世界記録を5月に出しました。日本記録は、伊藤浩司(現在甲南大監督)の10秒00です。日本初の9秒台スプリンターとなるのはだれでしょうかね。楽しみです!


 本書は、陸上競技の雑学を身に付けたい人向けの本です (^_^) 。気楽に読めます。


 なるほど! と思ったら、ワンクリックを → 教育ブログRanking