荒瀬克己「奇跡と呼ばれた学校」を読みました。

奇跡と呼ばれた学校―国公立大合格者30倍のひみつ (朝日新書 25)

奇跡と呼ばれた学校―国公立大合格者30倍のひみつ (朝日新書 25)

 京都市立堀川高等学校長が、公立高校復活の秘策を自らの学校の実践例で語った本です。この本の中から、これが秘訣かと思うところを抜き出しました。

 授業を柱とする3年間の高校生活の中で、どれだけの仕掛けやきっかけが用意されているか。学校の値打ちはこれで決まると言ってもよいでしょう。それはすなわち、教員一人ひとりが授業の質の向上のために、努力を続けられるかどうかにかかっている。ということです。

 いままでがすべてダメだと否定しないこと。改革とは日々の取り組みでもあるので、現状の延長線でいいところを見ながら手直しを加えていくべきです。いいところを見なくなったら、どんな組織であれ殺伐としてしまうでしょう。

 ・・・・堀川では数値目標を設定しません。そうしておかないと、目標を見誤るような不安があるからです。ちなみに堀川の進路に関する目標は簡単です。全員の希望進路の実現です。

 堀川高校では、改革を進めてきた当初から大切にしているいくつかの言葉があります。中でも、生徒たちが最も耳にする機会が多いのが「二兎を追う」でしょう。「すべては君の『知りたい』から始まる」というメッセージを、より具体的に示したものがこの言葉です。

 探究基礎をやっていると、最後の模試までに受験勉強が間に合わないため、A判定をとれる生徒はほとんどいません。判定がCやDでも仕方ないといえば仕方がないのです。しかし、そんな生徒たちが、最後は「この大学に入って学びたい」という気持ちによって現役合格していきます。・・・・・実力は湧き上がるものだと実感します。


 わたしの勤務校でも、生徒は学習に部活動にと忙しい日々を送っています。堀川の学校生活を見ると探究科目があり、勤務校以上に生徒は忙しいのではないかと思います。また、文科省指定のスーパーサイエンスハイスクール(SSH)の研究指定を受けており、高大連携などの取組を行っています。その中で生徒たちは自己実現に向かって頑張っているようです。要は発想の転換なのでしょう。一般に、例えば堀川の「探究基礎」などの特別な科目を設けたり、研究指定を受けたりすることにはある程度教員の抵抗があります。特に、進学校では「そのような活動や学習に時間をとられて、受験は大丈夫か?」というようなことが多いようです。いったん、そのような道を選択したならば、生徒たちにその活動や学習を通して自分探しを行わせ、学習へのモチベーションを更に高めようと肯定的に考える必要があるでしょう。中途半端にそれらの活動や学習をさせたならば、結局進路もダメになってしまうでしょう。


 さて、本当においしい話は、決して人には話さないと言います。学習のモチベーションを高めることは大切ですが、生徒の学力を向上させるためには、学校の学力向上に向けたシステムづくりも大切です。この点が本には書かれていません。
 堀川の進路指導の特徴は、1)ベネッセのスタディサポートや春秋2回の進路調査を行ったり、年3回の進路検討会や模試分析会を行ったりして生徒の学習状況をつぶさに分析していること。2)それらの分析を年3〜4回の生徒面談、年2回の保護者面談に生かしていること。3)宿泊研修、学習ガイダンスを行っていること。4)各学年次や長期休業中の学習計画を立てさせていること。5)7月21〜28日、12月21〜26日と全員学習や3年生補習が行われていること。


 このように、生徒の進路実現をシステムを構築してしっかりバックアップしています。このことについても、もっと教えてもらいたいのですが (^_^)。堀川高校は、昨日今日と教育研究大会・SSH中間報告会を開催しました。今年は気が付いたのが3日前でした。来年度は是非行ってみようと思います。



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