学習性無気力感理論

無気力の心理学



 10月9日のブログで、アメリカの心理学者マーティン・セリグマンを紹介しました。セリグマンは、動物実験から学習性無気力感理論を明らかにしました。無気力が学習されるのです。このことについては、波多野誼余夫他「無気力の心理学−やりがいの条件−」中公新書にくわしく紹介されています。


無気力の心理学―やりがいの条件 (中公新書 (599))

無気力の心理学―やりがいの条件 (中公新書 (599))


 セリグマンは、次のような実験を行いました。

  1. イヌをハンモックに縛り付け、何の前触れもなく、10回にわたって電気ショックを数秒間与える。
  2. 次の日、イヌを真ん中に柵が付いた実験箱に入れ、電気ショックを与える。ただし、柵を境に、片方のスペースには電気ショックは起こらない仕組みになっている。

 すると、次のような結果を示しました。

  • 前日電気ショックを与えたイヌは、電気ショックが起きたときにあわてるが、すぐにあきらめて電気ショックに耐えます。
  • 前日に電気ショックを与えていないイヌは、電気ショックから逃れようとし、運良く柵を跳び越えて安全地帯へ逃れた場合、それを学習し、再び電気ショックが起きた場合、すぐに柵を跳び越えます。


 自ら回避できない苦痛刺激に繰り返しさらされることによって、次のような状況をもたらします。

  1. 環境に能動的に反応しようという意欲が低下する。
  2. 新たなことを学習しようとする能力が低下する。
  3. 情緒的に混乱をきたす。


 このような状況は、大きな地震の後にも余震が続く状態、空爆が頻繁にある戦闘地域の状態を考えてみれば、容易に想像がつきますね。


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