子どもの自律性を支えるには
- 作者: エドワード・L.デシ,リチャードフラスト,桜井茂男
- 出版社/メーカー: 新曜社
- 発売日: 1999/06/10
- メディア: 単行本
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この本の主たる執筆者は、内発的動機づけ*1の研究の第一人者であるアメリカのデシ(Deci, E.L.)です。デシは、「外的報酬は、内発的動機を低下させる」*2という事実を明らかにした心理学者です。
内発的動機づけは自律的でありたい(自己決定したい)、有能でありたい、周囲の人と暖かい人間関係をもちたい、といった気持ちに支えられています。
自律的(自己と一致した行動をする)であることと対立した概念は統制されることで、圧力をかけられての行動がこれにあたります。
デシは統制された行動は良くないといいます。それでは、学校はどうなるのでしょうか。様々な目標があり、いろいろな制限があります。目標を達成させ、規則を守らせるには、子どもを様々な手段で統制する必要があるのではないでしょうか。デシは、次のように考えています。
制限を決めることは、子どもの責任感を育てる上でも非常に重要である。問題はそのやり方なのである。子どもの視点で考え、子どもの立場に立って、プレッシャーを与えるのではなく、子どもの自発性やチャレンジしようという気持ち、責任をもとうとする姿勢を積極的に励まし、子どもの自律性を支えることが重要なのである。
統制しないで励ますというスタンスは一見容易なことに思えるが、実は難しく、より多くの努力や技術が要求される。
子どもの自律性を支える具体的な方法は、次のようなことになるでしょう。
- 目標を決める過程に子どもをかかわらせる。
- 目標を達成できなかったことを、子どもの行動とすぐに結びつけずに、それを解決すべき問題とする。
- 学習の中で、子どもが学習にかかわった選択を行う場面をつくる。
- 指示をするときに、脅かしたり、強要したりなど圧力をかけない。
- 比較してほめたり、評価をしない。
- 外的な報酬を与えない。
- 競争させない。
この本は、心理学実験の話や日常での出来事を織りまぜて書かれおり、比較的読みやすいものになっています。普通の本ですが、後ろに索引があり、一度読んだ後も、活用しやすくなっています。子どもの自律的な学習意欲を高めたい方には、おすすめです。